亜鉛ダイカストの性質を数値で理解|成分・強度・磁性・比重etc…. 

亜鉛ダイカストの性質を数値で理解|成分・強度・磁性・比重etc…. 

製品設計で「亜鉛ダイカスト」を最適に利用するには、その特性と工法特有の挙動を同時に理解することが必要です。本記事では、成分、強度、磁性、比重、熱・電気特性、耐食性、寸法安定性、表面処理適性を実務目線で整理します。初学者にもベテランにも役立つ要点を主要な数値と一緒に理解できる内容にまとめました。 

亜鉛ダイカストとステンレス

亜鉛ダイカストの基礎

亜鉛ダイカストとは

溶融した亜鉛合金を金型に高圧射出して成形します。薄肉・微細形状の再現性が高く、表面が滑らかに仕上がりやすいのが特長です。一般的な金型寿命は数十万ショット規模で、年産数千~数十万個の量産に向きます。 

主な用途とロット感

家電・OAの外装金具、内装機構、住設金具、建材、装飾部品などに広く使われます。初期費(型代)がかかるため、目安として年産1,000個以上で単価の優位性が出やすくなります

亜鉛ダイカストの用途を産業別に徹底解説〜幅広い用途をまとめて把握〜

亜鉛合金の成分(合金系の考え方)

基本組成と役割

ベースは亜鉛(Zn)で、Al(約3~4%)、Cu(~1%前後)、Mg(~0.05%程度)などを添加します。  

・Al:流動性と機械特性のバランス向上 

・Cu:硬さ・強度を補強 

・Mg:時効安定・鋳造性の改善 意匠重視ならめっき適性と鋳肌、機能重視なら強度・クリープ性を優先します。 

鉛合金の比重・寸法安定性・収縮

比重と軽量化の考え方

比重は約6.6~6.8です(アルミ約2.7、鉄約7.8)。素材自体は鉄より軽くはありませんが、薄肉一体化(肉厚1.0~1.5mm目安)で部品点数と総重量を下げられます。 

収縮と公差のとらえ方

線収縮は目安で0.6~0.8%程度です。充填性が高く、量産での寸法再現性に優れます。仕上げなしでRa1.6~3.2μm程度の鋳肌が得られ、研磨やめっきで外観のグレードを上げやすいです。 

強度・靭性・クリープ

常温域の機械特性(目安値)

・引張強さ:260~330MPa 

・降伏強さ:180~250MPa 

・伸び:亜鉛合金は6~10%程度。アルミは1~3%程度 

・ビッカース硬さ:80~120HV 

これらは合金・条件で変動します。形状最適化(リブ厚=母材厚×0.6~0.8、ボス外径=ねじ外径×約2~2.5)で設計強度を稼ぐことができます。 

温度とクリープの注意点

連続使用の推奨温度域は常温~100℃程度が目安です。120℃超の長期荷重ではクリープ(時間依存の変形)が無視できなくなるため、温度マージンを確保し、構造補強や他材検討を行います。融点は約380~390℃です。 

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磁性・電気・熱の特性

磁性(非磁性)

亜鉛合金は基本的に磁性を帯びにくく、磁場の影響を避けたい機能部に適します。磁気干渉が懸念される装置周辺でも扱いやすい素材です。 

電気伝導性・熱伝導性

・電気伝導率:おおむね12~18MS/m(銅の約1/3~1/5イメージ) 

・熱伝導率:90~120W/mK 程度 

放熱性が必要な小物部品に応用可能ですが、電気接点はめっき併用が無難です。 

耐食性・表面処理適性

耐食性の考え方

屋内用途では素地でも実用的ですが、屋外・塩害・薬品環境では表面処理が推奨です。塩水噴霧の要求時間(例:48h/96h耐性など)は仕様で明確化し、処理選定の指針にします。 

主要な表面処理

ニッケル/クロムめっき、電着塗装、粉体塗装、化成皮膜など選択肢が豊富です。高級感や触感と耐食性を同時に狙えるのが強みです。前処理(脱脂・エッチング・活性化)の安定化が量産品質の鍵です。 

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加工・設計の勘所

成形性を高める設計

・基本肉厚:1.0~2.5mm(安定域1.2~1.8mm) 

・抜き勾配:外面0.5~1.0°、内面1.0~2.0°目安  

・R(面取り):0.3~1.0mm以上で応力集中回避 

・最小穴径:肉厚×0.8~1.0倍程度を目安(微細は要評価) 

・アンダーカット:スライド構造で対応可(コスト増を考慮)

ボス・リブ・ボイド対策

・ボス根元にリブ配置(厚みは母材×0.6~0.8) 

・急激な肉厚変化を避け、ヒケ・巣を抑制 

・ゲート位置と排気を最適化してバリ・巣を低減 

他素材との比較の勘所

アルミ・ステンレスとの使い分け(参考数値)

アルミは軽量・耐熱寄り、ステンレスは素地耐食・強度寄りです。意匠性・薄肉一体化・量産単価の観点では亜鉛ダイカストが優位な場面が多く、要求温度域と数量、外観グレードで最適解が変わります。比較数値は以下のとおりです。 

・比重:Al約2.7/Zn合金約6.7/SUS約7.8 

・熱伝導率:Al約200W/mK/Zn合金約100/SUS約15 

・素地耐食:SUS>Al≧Zn合金 

3分で丸ごと理解|亜鉛ダイカストとステンレスの特徴を比較

まとめ

亜鉛ダイカストは、比重6.6〜6.8程度の扱いやすい密度、常温域での安定した強度、非磁性、良好な熱伝導、そして高い寸法再現性と表面処理自由度が特長です。屋外や高温・長期荷重では留意点がある一方、薄肉・一体化・量産単価の観点で他素材にない価値を発揮します。設計初期に用途温度・環境・外観ランク・数量を明確化し、DFMと表面処理前提で合金と金型を決めると、品質とコストの最適点に到達しやすくなります。まずは試作と初期流動で規格合意を固め、量産に結びつけていきましょう。 

ダイカスト用語集